11月のコラム「出ない・つかない・流れないDay  ~当たり前の毎日に感謝し、もしもに備える~」 2026年10月25日

蛇口をひねれば水が出る。スイッチを押せば電気がつく。トイレの水も当たり前のように流れる。


そんな毎日の「当たり前」が、ある日突然なくなったら、私たちはどうするでしょうか。


園では毎月、さまざまな災害や時間帯を想定した避難訓練を行っています。今回は一歩踏み込み、朝9時45分から午後3時30分まで、水道・電気・トイレが使えない状況を想定した「出ない・つかない・流れないDay」を実施しました。


今回の訓練で大切にしたのは、ただ不便さを体験するのではなく、「どうしたらいいだろう?」と自分たちで考えることです。
訓練前、3・4・5歳児クラスでは、お子さまたちと話し合いをしました。
「手が洗えない!」「冷蔵庫が使えない」「亀のお世話はどうする?」「信号もつかなくなったら危ないよ!車にひかれちゃう!」
次々と出てくるお子さまたちの言葉。暮らしの中で水や電気がどれほど大切な役割を果たしているのか、小さな心で一生懸命考えていました。


そして、困ることを見つけるだけでは終わりません。
「カーテンを開ければ明るくなるよ」
「電池がなくなっちゃうから、懐中電灯は夜に使おう」
「地震が来る前に水筒にお水を入れておけばいいね」
お子さまたちの発想には、困難な状況でも自分たちにできることを見つけようとする、たくましさがありました。



当日は、職員も知恵を出し合いました。
限られた水を大切に使うため、ペットボトルの蓋に小さな穴を開けて手洗いに活用し、食事の前には床に新聞紙を敷き、掃除に使う水を節約し、ゴミ袋も新聞紙で手作りしました。
調理室では、カセットコンロを使って非常食を調理。ただ食べられればよいのではなく、災害時だからこそ「おいしいね」と笑顔になれる食事を工夫しました。


午後のおやつは、桃の缶詰とビスケットを使った簡単クッキング。お子さまが自分で作る楽しさと、おいしく食べる喜びが、いつもと違う不安な状況に笑顔を届けてくれました。
災害時、お子さまに必要なのは、食べ物や水だけではありません。安心できる大人がそばにいること、いつものように笑顔になれる時間があることも、大切な「備え」なのだと思います。
「うちには懐中電灯がないけど、大丈夫かな?」
そんなお子さまの一言もありました。園での経験が、ご家庭の防災を考えるきっかけになったことを嬉しく感じます。


園では非常食や飲料水を5日分備蓄し、発電機や簡易トイレなども準備しています。しかし、物をそろえるだけで十分とはいえません。実際に使ってみて初めて気づくこと、経験して初めて身につく知恵があります。


災害は、いつ起こるかわかりません。だからこそ、何も起きていない「今」が、備えるための大切な時間です。
ご家庭でもぜひ、お子さまと話してみてください。懐中電灯の場所を確認すること、水を備えること。そんな小さな一歩が、いざという時の安心につながります。


当たり前の暮らしに感謝する心。困った時に知恵を出し合う力。そして、誰かと助け合う優しさ。
今回の訓練は、お子さまたちにも私たち職員にも、たくさんの大切なことを学ぶ機会となりました。


この取り組みで大切にしたことは「お子さまたちに不便を経験させること」が目的ではなく、「不便な中でも、工夫すればできることがある」と気づいてもらうことです。


防災教育は、災害の怖さを教えるだけではありません。


「自分にもできることがある」
「みんなで考えれば何とかなる」
「困った時には助け合えばいい」


そうした経験を積み重ねることが、生きる力につながるのだと思います。


「もしも」の日にお子さまたちの笑顔を守れるように。
これからも、一つひとつの経験を大切に、共に考え、学び、備えていきたいと思います。



敬愛高倉保育園 園長

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