保育のプロによる月刊コラム

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2013年7月24日

7月のコラム 「人への信頼 ― 言葉への信頼」

~言葉によるコミュニケーション能力を身につけることから~


人への信頼―言葉への信頼
      ~言葉によるコミュニケーション能力を身につけることから~

 乳幼児期に言葉を使い始めた子どもは、学童期、青年期を通して
コミュニケーションや思考の具として、また美的表現の手段としての
ことばを完成させていく。
 そして、そのことによって、自分の外なる世界と内なる世界を
つくりあげていく。
 コミュニケーションとは「人々のかかわり合い」の意味であり、
その本質は「交わり共有し合う」とか「通じ合い一体となる」ことにある。
 そこは人間の「発達の場」子どもが自己を形成し、
その発達を展開していくための不可欠の場と捉えることができる。
 人間は「早産動物」だといわれる。
 人間は出生直後から大人たちの手厚いはたらきかけと
庇護のあることを前提とし、その約束のもとに生まれてくる。
 人間は生まれる瞬間から、周囲とのあつい人間関係に
たよることを前提としている社会的動物といえる。
 人間の子どもは「かれを大切に」愛せざるをえないでいる
人々のなかへ、そして自分もそれに十分応えうる存在として生まれてくる。
 最初から「人間の絆」を、生きるため、発達するための
必須の条件として生まれてくるのである。
 アフリカのことわざに「一人の子どもを育てるには
村中みんなの人の力が必要」というのがある。
今、保育園はその村中みんなの人になりたいと思う。
 
 保育園時代、お子様のことばは急成長をみる。
 1歳すぎ、一語文でミュ二ケーションをはかろうとしても
「かして」と言っても「いいよ」とはいかない壁にぶつかる。
 二語文が話せる様になり「あとでかして」と言えるとたちまち
「いいよ」と言ってくれ、この言い方には効力があると知る。
 一方、就学前の5歳児になっても言葉による
お友達とのコミュニケーションがうまくできず、
体や力で、動物的な物や場所、お友達や遊びを
奪い合う争いのようなやりとりを見ることもある。
一人ひとりは心に熱い情熱や優しさ、正義感が
いっぱいあるのにどうしてそれを合わせて楽しく盛り上がって
遊べないのだろう・・・争うことから、お友達と敵対し否定し、
人への信頼も育っていないのでは・・・

 そんなお子様の姿を見つつ、保育園生活の中でこそ、
真のコミュニケーション能力を育てなければと考えていた所、
昨年の夏の講習会で“配慮表現”を学んだ。
 配慮表現とは、相手の負担を緩和したり、相手への共感や
賛同を表す表現枝法で、対人関係を良好に維持しようとする
発信者の合理的で非慣習的な思考に基づいて行われる表現である。
 大人は「すみません・・・」「もしよかったら・・・」
「・・・してもいいでしょうか」などとよく使っている言葉だ。
 講習を受けた後、これこそ、お子様がことばによる
コミュニケーション能力を獲得する方法ではないか。
 おともだち大好き、お友達と一緒に遊びたい気持ちが
いっぱいあるお子様たちがコミュニケーション能力を
身につけていく方法なのではないかと、2歳児・3歳児クラスの
先生と相談し、先生が少し使って示していこうと言葉を選んで
示していった。

 はじめは「お名前」を呼びあうようにすると、これだけで
お友達になっていき、お友達が好きだから次の言葉は
自然に配慮表現になった。
 そうしているうちにお子様のコミュニケーション能力は
驚く程伸びて「○○ちゃん、次かしてね」「わかった」
しばらくすると「はい○○ちゃんどうぞ」「ありがとう」と。
 その他「ごめんなさいね」「ちょっと失礼」「ちょっといい?!」
「ちょっとごめんね!」どいてほしい時も、決して「どいて」などとは
言わず、「あちらでございます」。
 「きらい」と言われても「そんなこと言わないのぉー」と。
 困っているお友達を見かけて「どうしたの?」「何があったの?」
などの言葉を自ら使い、それは見事に大好きなお友達と通じ合い、
一体となる姿を見せていった。
 言葉によるコミニュケーション能力を身に付けたお子様は
人への信頼、言葉への信頼が育っていると感じた。
 一年を経たお子様たちは本当に仲良く良好な人間関係を
築いている。お友達を仲間に誘ったり、「いれて!」と入っていって
クラスは大好きな遊びで、盛り上がり、
言葉は楽しく賑やかに弾んでいる。

 この3月敬愛保育「絵画造形」ガイドブックも上梓された。
昨年の夏の講習会での学びも大きな力となった。
 「学は光」学べば学ぶほど、お子様のひとつひとつの姿に
改めてもっと深く感動して受け止められるようになると実感している。
 保育者の一歩成長がお子様の幸福に繋がる、との想いを胸に
この夏も敬愛学園の職員は、研修会、講習会へと学びの時を迎える。
 
副学園長  高橋 光代

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